大井川通信

大井川あたりの事ども

ゴマダラカミキリとケヤキの木

昼間、玄関の脇の地面に、ゴマダラカミキリが歩いている。今年も、そんな季節になったか。小ぶりの身体だが触覚が長く、見映えのするスタイルだ。黒地に白の斑点模様で、青みがかった光沢のウエットスーツを着込んだような姿だ。甲虫で美しさを感じるのは、他にはクワガタムシタマムシくらいだろう。

少しつついたりして遊んだが、いつまでもそうしているわけにいかないから、玄関脇のケヤキの幹につかまらせると、すたすたを上に登っていった。

しかし、カミキリムシの類は、樹木には害虫のはずだ。家に入って調べると、たくさんの木に食害をもたらすが、ケヤキもその対象になることがわかった。幼虫は幹の中をくいあらし、成虫も葉を食べるらしい。毎年、このあたりに飛んできたのは、ケヤキをねらっていたのだ。

しかし、それがわかっても、初夏の昼間、どこからともなく飛んでくるゴマダラカミキリは、少年の頃からの思い出がある友人だ。いきなり害虫として目の敵にする気はおきない。

とはいえ、樹勢の弱ったケヤキのケアも大切だ。あわてて外に出て、先ほどのゴマダラカミキリの姿を追うが、とっくに幹の上部の葉陰に隠れている。すると、根元近くにも、ゴマダラカミキリがいる。一回り近く大きく、触覚はさほど長くない。こちらは別の個体でメスのようだ。

どうやら、我が家のケヤキは本格的に彼らのえじきとなっているようだ。思わずつかまえて、近所の公園に放してきたが、これからはもっと遠方でリリースしなければいけないと思い直す。