大井川通信

大井川あたりの事ども

非常階段の話

ガチャガチャ(ガチャポン)のおまけには、とても変なものがある。200円か300円を入れて、ハンドルをガチャガチャと回して、カプセルを出す、あれだ。昔は10円のガチャガチャだった。今では、100円のものでも見当たらない。

ガチャガチャのコーナーをのぞいてみたら、非常階段の小さい模型が出てくるガチャガチャがあった。扉の部分の裏がマグネットになっていて、そこから踊り場が突き出て、階段が折り返しているのだ。ポリバケツの付属品がついていたりする。こんなものを誰がほしがるのだろう、と思いながら、自分が買ってしまった。

一番古い非常階段の思い出。

母校の中学の校舎の脇に、4階分まである鉄製の非常階段があった。大勢の生徒が利用できるように階段の幅が広く、まるで大きなジャングルジムのような外観である。幼児の頃、父親に連れられて、何度かその階段に登ったことがあった。裏門の近くにあるので、入りやすかったのだ。父親は、高台とか、坂の上とか、とにかく見晴らしのいい場所が好きだった。その校舎と非常階段は、50年経った今でも、同じ場所で同じ形でたたずんでいる。

初めて就職した会社で、休み時間同僚と息抜きをした非常階段も、30年の時間を経て、今でも古びたビルにはりついている。

非常階段が、その名前の響き通りの非日常の活躍をするのは映画やドラマの世界だろう。たいていは日常の中で、揺り起こされることなく、長くまどろんでいるようだ。