大井川通信

大井川あたりの事ども

世界は小ネタでできている

商業施設の裏手で、何か見慣れない虫がとんでいく。落下地点にいってみたら、カミキリムシだった。ゴマダラカミキリより一回り小さく、身体の斑点が黄色っぽい。キボシカミキリの名前がすぐに浮かぶ。首が長めで精悍な印象。昼間から飛ぶ気満々で、すぐに羽を割って、別の目的地に飛んで行った。

職場近くの林の中を歩く。暑い。ふわっと黒いアゲハが現れる。立派で美しいが、相変わらず種類がわからない。羽に尾のような突起がなければナガサキアゲハだが、突起があったら、処置なしだ。

気をとりなおして、苦手の蝶に注目してみようと思う。黒い中型の蝶で、羽を広げて止まる種類に気づく。黒い羽に横に伸びる白い模様が、三本の線のように見えれば、ミスジチョウ。一本の弓のような曲線だけなのが、イチモンジチョウ。これは白っぽい蝶だが、羽根が縦長の妙な形で、黒い線の模様が石崖みたいに見えるイシガケチョウにも再会する。蝶も奥が深い。

職場の屋上から見上げると、抜けるような青空をバックに、緑色に輝く甲虫が悠然と飛んでいる姿を見る。コガネムシのように丸くはなく、細長くて大きいから、すぐにタマムシと気づく。たまに見かけるのは道路わきなどでひっくり返っている姿だが、何かの用事があって大空に舞っているのが、本来の姿なのだろう。つかまえたかったが、林の上空に消えていった。

職場の自転車に、クモが巣をかけている。クモはせいぜい10ミリくらいの真ん丸な身体で、明るい黄緑色である。手に取りたくなるほどコロコロでかわいい。調べるとサツマノミダマシ(薩摩の実騙し)というクモだとわかる。形がハゼの実に似ているための命名という。このクモの巣にニイニイゼミがかかっている。小さな巣なのだが強力なのだろう。見ると、獲物を横取りしたいのか、自転車のハンドル部分にカマキリがいて、じっと動かない。どうなるのか。しばらくして見に行くと、クモの巣は職員によって取り払われて、虫たちの姿はなかった。やはり人間が一番こわい。