大井川通信

大井川あたりの事ども

小鳥たちの混群に包まれて

背の低い木々の明るい林の中を歩いているとき、突然、周囲に小鳥たちの気配がして、いつのまにか小鳥たちの群れに包まれている時ほど、鳥好きにとって至福の時間はないだろう。

これはおそらくカラ類の混群(いくつかの種類の小鳥が交ざった群)だろうと思い、視線をあげると、頭上の手が届きそうな枝々に、白っぽく尾の長い小さな鳥が、果物が生ったみたいにたくさんとまっている。エナガだ。近頃はその愛らしい姿が、写真集になったりもするアイドル的な小鳥。

するとヤマガラが二羽、低い枝を伝いながら、舞台に登場するように目の前にやってくる。エナガと同様に、人の姿をあまり恐れないのだ。昔はおみくじを引かせる芸などを仕込んだそうだが、その天性の性質を利用したのだろう。子どもがクレヨンでミカン色に塗りつけたような素朴な色合いの姿が好きだ。

やや遠くの木には、コゲラのまだら模様の姿も見える。小さくともキツツキらしく、さかんに枝の周囲をつつき回っている。

やがて、エナガたちが枝伝いに離れた木々へ次々に去っていくと、それを追うように、ヤマガラコゲラも飛び去ってしまい、林には、夢からさめたように明るい静寂が戻っていた。

あとで図鑑をみると、エナガの混群には、ほかにメジロシジュウカラやコガラ、それにキクイタダキも交じるケースが多いという。頭に黄色い菊の花びらをのせたようなキクイタダキの姿も、長い間みていない。

今年の夏は、虫ばかり追いかけていたけれども、そろそろ本業の鳥見に戻らなければ。今日は不意に肌寒さを感じるほど秋めいた日だった。