大井川通信

大井川あたりの事ども

自治会の掃除を忘れる

朝おきると、窓越しに家の真向かいにある小さな公園でにぎやかな人の声が聞こえる。昼でも子どもがめったに遊ばないような小さな公園だ。

しまった。今日は自治会の一せい清掃の日じゃないか。

今さら出ていくわけにもいかない。家のなかで身を縮めて、清掃の時間が終わるのを待つ。さぼった事実は変わらないのだが、公園から声が聞こえなくなると、少しホッとする。過ぎたことはしようがない。次には参加しようと切り替える。

僕も妻も人見知りだから、この地域に越してきてから、自治会の行事にどちらが顔を出すかで、ずいぶんもめた記憶がある。特に年に4回ほどある公園清掃では深刻だ。

自治会は、10余りの組で構成され、組には十数軒の家がある。十数年に一度、持ち回りで組長になり、自治会の仕事を一年間行う。組長さんたちで、翌年一年間の役員を決めるという仕組みだ。推薦の選挙などやってもなり手がないから、結局は、組長たちが話し合って自分たちで役員を引き受けることとなる。

5年ばかり前、僕は順番で組長になって、その流れで翌年、自治会長を引き受けざるを得なくなった。妻は猛反対で、やるなら自分はいっさい協力しないという。その公約通り、毎月の役員会やら広報誌の配布やら、諸行事の企画も手伝いも、妻は何一つ手伝うことなく、一年間の激務を単独でのりきった。

おかげで、僕のご近所アレルギーは消えて、自治会の掃除で夫婦喧嘩をすることもなく、さっと自ら軍手をはめて出かけられるようになった。そうなると、小一時間の清掃なんて何のこともない。

ところが、精神的な負担がなくなると、かえって忘れがちになる。妻もすっかり自分の責任外と思っている様子だ。これで、自治会全体の一せい清掃を二回続けてすっぽかしてしまった。自分の歩いて行ける範囲に責任をもつと公言している身としては、これはちょっと恥ずかしい。