大井を歩いていると、アスファルトの上にスマートなトンボが落ちている。腹の付け根が極端に細く、腹部の黄色いシマは目立たない。黄緑色の身体に鮮やかなブルーの斑点がある。夕方になると、目の前をぐるぐると元気に巡回していたカトリヤンマだ。季節が終わって、力尽きたのだろう。
別の場所では、スズメバチが道端にうずくまっている。最恐の昆虫は、死ぬときも不敵な仮面をはずさない。
今年も道路上に弱ったカマキリが出てくる季節になった。体力を失って、日差しで温まるアスファルトの上で暖をとっていると解釈しているが、どうなのだろう。
秋になって、逆に元気になる虫もいる。秋の女王といわれるジョロウグモだ。林の中でも、民家の庭でも、ところかまわずにクモの巣をひろげて、その中央で肥え太っている。同じ黄色と黒色との縞模様のコガネグモは、夏の女王とはいっても、田んぼの水路の上にだけ、節度をもって巣をかけていたのに。
ところで昨年は、ジョロウグモが自分の巣にからまるか、とか、真冬にいつまで生きているのか、とかの観察をした。わざとクモの巣でぐるぐる巻きにしても何とか脱出することを発見したりした。
今年は、巣にどんな虫がかかっているのか観察していたら、一回り小さいジョロウグモを繭のように糸でくるんで食べている姿を見つけた。同じメス同士だ。何かの間違いで、他人の巣に侵入してしまうこともあるのだろう。