大井川通信

大井川あたりの事ども

組物を手にして小躍りする

以前ホコラの修繕のワークショップでお世話になった建築士の金氣さんから、組物をいただいた。金氣さんが関わっているお寺の改修があるから、その時不要の組物を取っておいていただけるという話だったのだ。しかし、実際に手にすると小躍りしたくなる気分となる。

組物は、斗拱(ときょう)ともいい、お寺などの古建築で、柱の上にすえつけて軒をささえる部材である。数個の部品の組み合わせだけの簡単なものから、数多くの部品を壮麗に組み上げたものまである。

言葉だけだとわかりにくいが、寺社で建物の軒下にずらっと並んでいる組物は、一般の人にもなじみ深いものだろう。そのためか、文化庁が定めた文化財愛護のシンボルマークには、組物のイメージが使われている。

僕がいただいたのは、平三斗(ひらみつど)と呼ばれる形式の組物だ。柱の上に取り付ける大きな「斗(ます)・大斗(だいと)」に、舟の形の長い「肘木(ひじき)」を組み合わせて、その上にさらに三つの小さな「斗」を並べる。その斗の上にさらに「実肘木(さねひじき)」が乗る。これが、桁(けた)と呼ばれる横材と軒を支えることになるのだ。

六つの部品を組み合わせると、全体の姿は、幅85センチ、高さ30センチの逆三角形となる。重さはずっしりと、10キロ弱。広く実肘木で受けた力を収束させて、大斗でしっかりと受け止めるという力動感あふれるフォルムだ。

中学生の頃から、古建築を見るのが好きだったので、当時、気に入った建物を鉛筆で描いていて、軒下の組物だけのスケッチも残っている。そんな僕が、実際に寺院建築の軒を支えていた本物の組物を手に入れるとは、世の中、どんな幸運が待ち受けているかわからない。