大井川通信

大井川あたりの事ども

僕が『歩く』ときには

では、僕が今日、どんなふうに歩いたかを振り返ってみる。

用事から家に戻ったときには夕方で、暗くなるまで一時間もない時だった。それでも歩こうと思ったのは、ちょっとした当てがあったからだ。

昨日昼間、家の近所を車で通りかかったときに、道路わきの電線の近くでうねるように飛ぶ小鳥の群れを見かけたのだ。通り過ぎてから、アトリではないかと気づいた。ちょうど6年前の今の時期に、はじめて群れに遭遇したことが日記につけてあるが、それ以来間近く見たことはない。薄いだいだい色と灰色とが混じった色で特別に美しくはないが、大きな群れで飛び回る姿は壮観だ。

大井始まった山伏様の銀杏の木のてっぺんに、胸をそらしてツグミが一羽とまっているのを見てから、川沿いの広い農耕地へ。しかしどこにもアトリの気配はない。ちょうど5時になったので、いつもは出入りもなく静かな印刷工場から、作業着を着た人がぞろぞろと出てきて、車を運転して散り散りに帰っていく。ここにも濃密な人々の生活があることに驚く。

せっかくなので、足を延ばして、川を渡り、「ひさの」まで歩く。ちょうど夕飯時で、田中さんとは立ち話を少しできただけだったが、満足して引き返す。あたりはすっかり暗くなったが、上空をカモの群れが何度も旋回している。さきほど川に浮かんでいたマガモたちだろうか。こんな習性があることを覚えておこう。

閉店時刻の過ぎた「村ちゃこ」に寄ると、囲炉裏の前で原田さんが筆で年賀状を書いていた。小川さんは息子さんに電話していて、大学の合格が決まったところだという。電話を代わって僕も激励する。

そうして、月明かりを頼りに、妻と次男の待つ自宅に戻った。我が家にも今日、次男の障害年金の決定の朗報があって、華やいだ空気が流れている。

往復3時間で、ほぼ5キロの行程。