大井川通信

大井川あたりの事ども

初春の女郎蜘蛛

暖かいお正月だったが、今日にいたっては日中20℃にもなった。4月の陽気である。

正月連休前には、職場近くの林のジョロウグモは、二匹を残すのみだった。前年の冬よりサバイバーの数は少ない。久しぶりにのぞいてみると、一匹だけは年を越してまだ生きている。ただし悲壮な感じはしない。今日の天気に、なにやら動きも軽快である。

全盛期のジョロウグモの巣は見事な円形の大きな網を張っているが、今はもう縄ばしごをかけたくらいのみすぼらしさだ。それに松葉が何個か引っかかっている。何をしているのかと思ったら、松葉を巣からはずして落としているのだ。大切な商売道具のメンテナンスは欠かせない。春のような暖かさに、すっかり生きる気力を取り戻したようだ。

巣の掃除が終わると、ジョロウグモは、巣の真ん中に移動して、獲物を待つ不動の姿勢を見せた。まるで剣の達人の「正眼の構え」みたいだ。ただ気の毒なことには、数本の糸でかろうじてつながっているだけの巣に獲物がかかることはないだろう。


*この日の夜半から台風を思わせる風雨におそわれて、翌朝にはジョロウグモも巣も見当たらなかった。