大井川通信

大井川あたりの事ども

ハヤブサを見た

昼休み、河口付近の商業施設にお昼ごはんを食べに行く。すぐ頭の上の空を、二羽の鳥がもつれながら飛んでいく。カラスか何かがじゃれているのかと、反射的に思った。

しかし、川の向こうに逃れていった一羽はハトで、取り逃がした方の一羽は、今度は急転回して、川の水面に休むカモの群れに向って突っ込んでいく。カモがいっせいに飛び立って、ここでも獲物にありつけなかったハンターは、道路わきの鉄塔の頂上にとまった。

タカなのはまちがいない。オオタカハイタカだろう。手元には小型の双眼鏡がある。タカの顔には、目のまわりから頬にかけて黒い大きなくま取りが目立つ。まさか、あの鳥では、と思いつつ観察を続ける。

のどは白く、首の回りも白い。胸から腹にかけて、横じまの短い線が細かく入っている。下から見上げる身体は、ずん胴で丸みをおびている。あわててネットで画像を検索して、確信した。そう、ハヤブサだ。

ハヤブサは、大分県の姫島で断崖にいる姿を一度だけ見たことがある。しかし、こんな身近な場所で出会うことができるとは。毎週末買い物に来ている店の前だ。

ハヤブサは鉄塔から飛び立つと、上空を大きく旋回して、今度は狩りをせずに林の方に消えていった。細長い翼の先がとがっているというハヤブサの特徴を、こんどはしっかり確認できた。

やはり空の王者の風格がある。この辺りはミサゴの狩場だが、魚だけをねらうミサゴの姿をみて小鳥たちがざわつくことはない。高速の空中戦で平然と同族をおそうハヤブサの非情さは際立っている。

ハヤブサを見たのだ。信じられない思いをかみしめながら、職場に戻った。