朝の散歩をかねて、姉に大井の周辺を案内する。住宅街から、秀円寺の裏山を伝って集落に降りる。ここには里山の雰囲気がかろうじて残っている。ひっそりと天保の石仏、享保の庚申塔があって、歴史の世界へと誘う入口となる。
大井川を渡り、クロスミ様へと続く林道わきの古墳を見せる。このあたりに多い円墳の一つで、小さな石室が露出している。遠目に和歌神社、水神様を見ながら、大井川の小さな流れに沿って歩く。水が濁っていると指摘されるが、たしかにいつもこんな感じだ。ダムの周辺のソーラー開発が原因かもしれない。藪から、腹の黄色い小鳥が飛び出す。これはアオジ。
旧大井炭坑の入り口を教えたり、薬師堂の脇の桜が春には見事に咲くことを話したりしながら、古民家カフェの村チャコに寄る。主人は不在だが、手作りの生き物のような椅子やテーブルが迎えてくれる。
街道沿いにある大クスまで歩く。このあたりはボウジという地名で、柳田国男の本で村の境界を示す名だと知った。引き返して、広々とした田んぼの中を歩く。暖かい陽気に誘われてか、ヒバリがさかんに飛び立って空中で鳴いている。
大井始まった山伏の銀杏の木の近くを通り、納骨堂の前の十人の山伏のお墓にお参りする。彼らが大井村の草分けだという伝承があるのだ。新年できれいな花がお供えされている。お世話をしていたムツ子さんは亡くなったが、家族の人たちが手向けたのだろう。
大クスとは反対側の村はずれにある首なし地蔵を見てから、住宅街に戻る。