共通一次試験のことを書いていて、高3の時の選択授業の雰囲気を思い出した。僕の高校では、進路別のクラス編成をとらなかったから、希望の進路によって違った授業を受ける選択授業の時間があったのだ。
僕は文系だったから、理系のクラスメイトとは別れて古典の授業に移動して、他のクラスの生徒といっしょになる。その中に放送部のYさんがいた。
Yさんは放送部の女子で美人で明るかったから、学年でも目立っていたと思う。制服のない高校だったので、Yさんが私服のロングスカートでさっそうと自転車にのって通学する姿が目に焼き付いているのは、たぶん僕もあこがれていたためだろう。
当時から僕は「積極奇異」の素質を十分に持っていたから、面白いことを言ったり奇抜なことをしたりして、人を笑わすことばかりしていた。古典のクラスで、Yさんに笑ってもらえるのが何よりうれしかったのを覚えている。
社会人になってしばらくしてから、東京学芸大が進学したYさんがフジテレビのアナウンサーになっているのを人から教えられた。夕方のニュースで原稿をよむYさんには当時の面影がなくて、あまり懐かしい感じはしなかった。
80年代の終わりにはフジテレビを中心に女子アナブームが起こり、新人の女子アナが芸能人のように注目されるようになる。しかし、Yさんはその少し前の入社だ。彼女はアイドル扱いされることもなく、やがて朝のワイドショーの司会などもこなし、その間、結婚で名字が変わったり、元に戻ったりした。しばらく前からテレビでは見かけなくなり、今では、アナウンサーを離れ、テレビ局の幹部のポストについているようだ。
たわいもない思い出話だが、これも「歴史的証言」となるのか、ならないのか。