赤色巨星ベテルギウスの異変を知ってから、久しぶりに夜空の天体が気になっている。子どもの頃は天文ファンだったが、それ以降は、彗星が評判になった時くらいしか夜空を観察することもなかった。
大井の里山を開発した今の家に引っ越したばかりの時、まだ周囲の住宅街も街灯もなかったから、天の川が見える満天の星空に驚いた記憶がある。
あらためて、夜空を見上げると、そこに宇宙がある。当たり前のようで、驚くべきことだ。
「天(あま)の海に 雲の波たち 月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ」
大井の鎮守は「和歌神社」という艶やかな名前の神社で、柿本人麻呂をまつっている。大井をフィールドにしている以上、柿本人麻呂の歌集くらいは読もうと思いつつ、とりかかれないでいた。そんな中、たまたま手に取った本に紹介されていた人麻呂の歌だが、とてもいい。
月の船が、雲のかかった星空を航海していく。和歌神社の境内から天球を見上げて、このスケールの大きな歌を口にしてみたい。