大井川通信

大井川あたりの事ども

百千鳥の季節

今年は暖冬で、二月半ばにようやくきた厳しい寒波もすぐにひいてしまった。暖かいので散歩していると、職場近くの松林で、不意に小鳥たちのさえずりに取り囲まれる。松の枝先の松葉に顔を突っ込んだり、垂直の幹に止まって、樹皮の割れをついばんだりする。その時、日が当たるグリーンの背中の美しさ。

メジロだ。それもかなりの数だ。木々の間を、小さなボールのように飛び交いながら、やがて同じ方向に消えていく。

僕は小さな単眼鏡で目をこらして、群れの中に別の種類が混じっていることを期待する。どうやら混群ではなく、メジロだけの群れのようだ。

もうだいぶ以前になるが、同じ場所で、頭にちょんと黄色の羽をのせたキクイタダキ(菊戴)の群れに出会ったことがある。キクイタダキメジロと同じく、人をあまり恐れない。太宰府天満宮の梅林で、ほんの手の届くところまで寄ってきてくれたことがあった。また会いたいと思う。

人を恐れないと言えば、エナガの群れも、人影には無頓着だ。先日の広島旅行では、不動院の境内の松に、しきりにたかっているのに出会った。その少し前には、山間のダムの斜面を伝う群れを見ることもできた。ふわふわの毛玉のように丸い身体にピンと伸びた尾。写真集がでるくらい、人気の小鳥だ。

俳句を読んで、百千鳥(ももちどり)という季語を知った。春になって、鳴きさえずる小鳥たちが多くなる様子をあらわす言葉だそうだ。まさに百千鳥の季節がやってきたのだ。