大井川通信

大井川あたりの事ども

窓から見えるもの

今の職場の机から目をあげると、窓ごしに松林の上の空を見ることができる。そこには、たいていトンビやカラスの姿があるが、時にはミサゴが飛ぶのが見える。

ミサゴは、英語名はオスプレイ。空中で自在に姿勢を変え、水中の魚をめざしてダイブする、あの勇敢なタカのことだ。

すごいだろう。仕事中にミサゴの姿をおがめるなんて。誰に言うともなく、そんな自慢をつぶやいて、ふと思い出した。

かつて鉄道に近い仕事場に通っていた時、空港の離発着の進入空路も近かったから、窓から新幹線と旅客機の姿を同時に見ることができたのだ。乗り物好きにはたまらない眺望だった。

そういえば、社会人になって初めて勤めた事務室の窓からは、眼下にすぐ本物のお城の天守閣が見えていた。今はその古いビルのまえに、大きな複合施設が建ち、その眺望はさえぎられているはずだ。

こう考えると、職場の窓には、いろいろ魅力のあるものが映っていたことに気づかされる。それは、人間の仕事場というものが全国津々浦々のあらゆるところにある、という平凡な事実のあかしなのだろうか。それとも、窓というものの摩訶不思議な効果、異世界をつなぐという奇跡性に負うているのだろうか。