大井川通信

大井川あたりの事ども

セミの季節

5日ばかり前に、職場の窓の外の林から、不意にセミの鳴き声が聞こえてきた。

一年ぶりの出来事だから、まだカンが戻らず、というかそもそもセミに真剣に向き合ったのは去年が初めてだったので知識が身についていなくて、何のセミの声なのかはわからない。翌日になってようやく思い当たった。

にもかかわらず、お調子者の僕は、得意そうに職場の同僚に触れ回る。この声の主は、何というセミでしょう。

アブラゼミ? なるほど鳴き声は少し似ているけれど、時期が早すぎますよね。

クマゼミ? 本格的に鳴きだすのは梅雨明けの頃だし、それでも午前中しか鳴きません。

昨年まで、いや前日の僕と同じ様に、この質問に答えられる人はいない。正解はニイニイゼミ。小柄な割には声は意外と大きく、キーンという耳鳴りみたいな(?)ちょっと嫌な高音が交じるのが特徴だ。4月から松林で鳴くハルゼミを別にすれば、セミの季節の先陣を務める。

それが今日から、クマゼミの鳴き声もいくらか聞こえるようになった。しかし、仲間がまだそろっていないせいか、ごく短い時間で、声も弱い。それでもワシワシワシという夏の王者の鳴き声は懐かしい。いよいよ夏到来、という感じ。

実は、四日前に我が家の庭で、今年初めてのクマゼミの抜け殻を見つけた。昨年も7月初旬だった。抜け殻を見つける時期と実際に鳴き声を聞くようになる時期との間にタイムラグがあることに、昨年の観察で気づいている。

ニイニイゼミクマゼミアブラゼミヒメハルゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシと、まもまく役者もそろうだろう。今年地中から出て来るセミが直面するのは、昨年までとは違う不安定で、混乱含みの世の中だけれども、そんなことにお構いなく元気な声を響かせてくれるはずだ。