大井川通信

大井川あたりの事ども

犬も歩けば棒に当たる

小雨の中、午後から住宅街の丘を降りる。子犬を連れたお年寄りと行き違う。猫を飼うようになってから、小動物が可愛くてしようがないので声をかけると、ボストンテリアとのこと。ブルドックじゃないのか。

久し振りに村チャコに行くと、村の賢者原田さんと助手役のワタナベさんのほかに、親子連れのお客さんがいる。お父さんは僕と同世代で、娘さんは大学生のよう。仕事で津屋崎に宿泊し、今日東京に帰る前にレンタカーで宗像大社を見て、たまたま大井によったのだという。大手都市銀行の部長さんで、公共部門を担当して地方の街づくりや観光開発にも関わっているらしい。

それなりに知名度のある津屋崎のあとに全く無名の大井の村チャコに立ち寄るセンスはすごいと、原田さんたちと笑う。僕はいつもの駄弁を弄して、原田さんを持ち上げて紹介する。

10代の頃から人生に迷いを生じて禅寺に飛び込み、20代の10年間は、世界的なカトリック神父押田成人のもとで修業をした。会社員を経て、50歳を過ぎてから自分の理想とするムラづくりに細々と取り組んでいる。詩と書と絵を手掛けるものの、無名のまま終わるかと思いきや、突如インスタグラムに目覚めて、作品を世界に発信している・・・

原田さんも上機嫌で、額装した作品を店内に並べて説明をする。聞けばお父さんは、東京多摩地区の町田の生まれで、吉祥寺にある高校に通ったそうだ。僕も同じく多摩育ちで、同じ武蔵野市内の高校に通ったので、話が盛り上がる。

話しながら、ふと、この親子と昨日津屋崎の玉乃井の入り口で出会った気がしてその話をすると、親子も声を上げて驚く。玄関先で、僕から「開いていますよ」と声をかけていたのだ。あの時何か魔術をかけられて、この店に導かれたんじゃないかと娘さん。

村チャコを出て、街道沿いのカフェまで歩き、少し早い夕食のカツカレーを食べる。マスターが常連らしきお客としきりに山下達郎の話をしている。読書を楽しんだ後、暗くなった道を傘をさして歩いていたら、長男が運転する車が偶然通りかかり、家族とともに自宅に戻る。