大井川通信

大井川あたりの事ども

続・本をならべる

僕は、もともとどんなふうに本をならべていたのだろうか。

文庫や新書や叢書などは、種類ごとにひとまとめに並べる。それ以外の単行本は、だいたいジャンルごとに並べているけれども、本のサイズをできるだけそろえて、それも高さ順にきれいに並べたい気持ちが強いから、ジャンル分けの方は厳密ではない。

この妙に神経質な並べ方の癖は、父親譲りであるような気がする。父親の書棚は、本を少しでもいじれば父親が気づくという「神話」が家族で信じられているほど、几帳面に整理されていた。

茶の間の大きな書棚には、全集や著作集の類、柄谷行人廣松渉、今村先生など、尊敬する書き手の本をまとめて並べている。自室のメインの書棚には、評論系の本がジャンル別に置いてあるけれども、詩集のコーナーや建築関連の本のコーナーがあるのが、多少の特徴かもしれない。文庫や新書は、あちこちの小さな書棚に並べている。

物置部屋にも書棚があって、昔の雑誌や書物を並べ、捨てがたい本は段ボールにつめてある。それだけでなく、今では寝室にまで本が押し寄せている。やれやれ。妻が文句を言うのも無理はない。

少し前に、小規模の個性的な品ぞろえの書店が話題になったときに、ジャンル別の棚が文庫や新書も含めてサイズがごちゃまぜに並べているのが、新鮮だった。そのまねをして、大井川歩きの関連本を一か所に集めて、わざとサイズを適当に並べると魅力のある書棚になった。このコーナーは、今でも細々と維持している。

いつか自分の蔵書を圧縮して、ベスト100くらいに絞って手元に残したいという野望がある。自分の人生の期限がわかればそれもできるだろうが、おそらく野放図な蔵書をぶちまけたまま、家族に文句をいわれつつ、この世を去ることになるのだろう。