大井川通信

大井川あたりの事ども

『ノラネコの研究』伊澤雅子(文)・平出衛(絵) 1991

研究書のようなタイトルだが、福音館の全40ページの絵本だ。

著者が追いかけた野良猫のナオスケの一日の振舞いを絵本にしている。追いかけた、といっても一日の移動距離はせいぜい1キロメートル余り。睡眠時間は18時間以上で、休んだ場所が4か所。ご飯を食べるゴミ箱は1か所で、2回立ち寄っている。

場所は、海沿いの小さな町で、住宅が並び、空き地もお寺もあれば、田んぼや畑もある。ナオスケを含めて、10匹の大人の猫が住んでいるという。野良猫のナオスケを見守る著者の視点で描かれた絵が、あったかくていい。

他の猫と出会ったときのルールは、ゆずり合いと早い者勝ち。目を合わせないようにして、順番をまつ。犬に出会ったときも、予定の道があくまで、のんびりとまっている。

夜になって、田んぼを散歩する場面では、遠くに山並みが見えるあぜ道を歩くナオスケの気持ちになって、僕もわくわくしてしまった。絵本には書いてないけれど、きっとカエルやバッタをおいかけて、ごちそうにしているはずだ。

僕がたまに見かける野良猫(地域猫)たちは、建物の陰などで昼寝していることが多いけれど、猫たちがのんびりとした中にも規則正しい暮らしをしていることを教えられた。我が家の家庭猫の九太郎も、狭い家の中で、誰にも気づかれずに自分なりの日課をこなしているのかもしれない。