大井川通信

大井川あたりの事ども

『地方消滅』 増田寛也編著 2014

5年前のベストセラー。帯には、「新書大賞2015第1位」の文字が躍っている。例によって、積読本を今になって読む。

出生率の低下や少子化につていは、だいぶ前から社会問題になっていた。しかし、そのことがもたらす人口減少については、せいぜい高齢化が指摘されるくらいで、具体的なイメージが語られることが少なかったと思う。

本書では、人口減少をあくまで地域単位で分析する。ある市町村にとっては、それは自然増減と社会増減という二つの要因の組合わせだ。前者に対しては、従来の「少子化対策」が効果を発揮するが、後者に対しては、自然流出を食い止める「地域構造対策」が必要となる。

人口減少に対しては、それは必然であり、かえって国土が住みやすくなるという気楽な議論がある。本書は、それがどんな人口減少なのかを問題にし、無策であればこうなるという最悪の青写真を提示する。

各市町村ごとの若年女性数の推移に注目して、それが30年間(2010~2040)で5割以下となる市町村を「消滅可能性都市」と判断すると、それが896自治体にも呼ぶという。

東京一極集中が、本来地方で子育てすべき人たちを吸い寄せて地方を消滅させるだけでなく、子育てしにくく出生率も低い大都市の環境の中で、結果的に国全体の人口を加速度的に減少させていくという青写真だ。

これに対して著者は、少子化対策とともに、地方中核都市を最後の踏ん張りどころとして新たな集積構造を構築し、人口流出に対する「ダム機能」を果たさせるべきだと提案する。

この本は当時衝撃をもたらして様々に議論された。とくに地方の住民や政治の意識を変えて、政策に影響を与えるくらいのインパクトがあったと思う。日々の生活で無意識に感じていることを明確に言葉にされたような印象があったからだ。

現状のデータはどうなっているのだろうか。大きなトレンドに抗するのは困難だが、地方における様々な努力が多少とも実を結んでいてほしいと思う。