大井川通信

大井川あたりの事ども

こんな夢をみた(合歓の木)

実家の隣の原っぱが、きれいに雑木も雑草も刈り払われて、平坦な土地になっている。けれど、合歓(ねむ)の木だけは、空き地の真ん中に一本残されている。

昔から懐かしい合歓の木だ。栗の木ばかりの中を、手のひらのように枝を上品にひろげて、季節にはきれいな花をまとっていた。

あのころは幹もまだ細かったが、今はどのくらいになっているだろう。幹を見ると、すでに両腕を回してようやく届くくらいの大木になっており、根元には、見慣れない巨大な石があって、根と幹がそれを抱え込んでいる。

こんな石はなかったはずと思いながら近づくと、巨石の表面には子どものいたずら書きのような文字が彫られている。

これは僕たちが彫ったものではない。すると、僕たちのあとにこの原っぱで遊んだ子どもたちいて、彼らがこれを記念に彫ったのだろう。そして、この合歓の木を大切に保存しようと考えたのに違いない。

思い出の樹形そのままで大きくなった合歓の木を見上げながら、時の経過を淋しく思いつつ、こんなふうに大切にされていることがうれしかった・・・

 そうして、目を覚ました。

実家の隣の原っぱは、何年も前に造成されて、数軒の家の敷地になってしまったことを思い出す。すでに実家も人手に渡っていて、合歓の木など跡形もないのだ。