大井川通信

大井川あたりの事ども

『公務員クビ!論』 中野雅至 2008

これも積読本。公務員の不祥事によるバッシングと公務員改革が本格化した頃の本だ。今になってようやく読む。

公務員受難の時代が続くという予言は当たったが、著者の主張する官民統一から官民流動の流れが起きているとはいえないし、12年たっても公務員をめぐる状況は、たいして変化していないように見える。だからこそいっそう危機的なのだろうが。

著者は市役所職員を振り出しに、労働省のキャリア、県庁管理職、国の出先、公立大学教員という様々な公務員経験をもち、公務員とひとくくりにできない職種の内情を語っている。特に、2000年ごろからのキャリア官僚の受難の証言が興味深い。

まず、「所管争い」という省庁のセクショナリズムに疲れ果てる。次に、「族議員」から怒鳴って労務管理されることへの不満。政治主導、さらには官邸主導のもとで増え続ける雑用。官僚は優秀/無能という評価使い分けるマスコミ・世論の公務員バッシング。「政治的案件」処理等でリスクが高まる利害調整への嫌気。

ちなみに、キャリア官僚への志望動機の本音は「権限と権力」の魅力であり、地方公務員の場合は「安定」なのだそうだ。

著者は、最後の章で、格差社会における行政サービスの困難について論じている。格差が広がる中で、「地域ブランド」の重要性がいっそう高まること、教育環境の整備で「格差を固定化しない」努力が可能なこと、という二つの指摘は示唆的だった。