大井川通信

大井川あたりの事ども

嵐の前の静けさ

今までの経験したことのないような最強台風がくるという。土日に重なり対策が取りやすかったためか、スーパーのペットボトルや菓子パン類が売り切れている。息子二人といっしょに家の外回りを片付け、飛びそうなものをロープでしばったりした。

雨戸のない窓ガラスの内側をテープで補強したのは、今回が初めてだ。停電や断水を覚悟して、常温で保存できる食糧を買いそろえ、湯船の水をはった。台風を迎える側も、今までやったことのないような対策を行ったのだ。これは、多くの家庭や職場でもそうだったのではないか。

十分な備えを終えて、嵐の襲来する前の街で、買い物がてら車を走らせてみる。

どこか街の印象が変わっている。何が違っているか具体的には言えないのだが、ふだんの様子と明らかに違うのだ。人通りや車が少なくて、「嵐の前の静けさ」という不気味さが支配しているのは間違いないが、どうもそれだけではない。

妙にこざっぱりとして、幾何学的に単純化されてしまったように見える。なるほど。普段街並みを構成している雑多なモノたち、植木鉢やら看板やらオブジェらやらがすっかり取り払われてしまったのだ。ざらざら、ごてごてしたものがなくなり、街は構造物の輪郭とつるつるした平面だけになってしまったようなのだ。

風は夕方から吹き始め、夜半から明け方にかけてもっとも強くなり、午前中の内にはほぼ吹き止んだ。最強クラスではあっても、今までに経験した強さを超えるものではなかった気がする。幸い、街に目立った被害もなかったようだ。

予想より勢力が衰えた原因として、数日前にほぼ同じコースを通った台風が海水面をかく乱して、その表面温度を下げてしまい、今回の台風に十分なエネルギーを供給しなかったという説がでている。もっともな説明だが、そういう単純な条件を予報に反映させることはできなかったのだろうか。