ゴミ屋敷みたいな無防備な浮巣でのカイツブリの抱卵は続いた。あいかわらず、親は一羽しか見当たらない。すると、ため池の水かさが少し減ってきたことに気づいた。浮巣は枯れ枝にくくりつけて流されないようにしているから、水面が大きく下がると持ち上がって使えなくなってしまう。はらはらしながら毎日見ていると、何日か前、完全に壊れてしまった巣の周囲に、二羽の親がいることに気がついた。だめだったか!
しかし、よく見ると、一羽の親の背の羽の間から、ヒナの小さなくちばしが飛び出している。少なくとも一羽のヒナの誕生には間に合ったのだ。もう一方の親鳥が、未練がましく巣を直そうとしているところを見ると、まだ孵化していない卵もあったのかもしれない。
こうして、この季節外れのカイツブリの子育ては始まったばかりだ。今まで気づかなかっただけで、条件さえあえば秋にも子育てをしていたのかもしれない。
親の一方が近くで潜水して、かなりの頻度で小さなエサをくわえてくる。ヒナはおんぶされたまま、くちばしだけ突き出して受け取ることもあれば、水面に降りてからエサを受け取りすぐに親の背に戻ることもある。オスかメスかはわからないが、おんぶの当番は固定されているようにも見える。
いっぱい食べて早く大きくなってほしいと、親鳥とともに思う。成長してこの池から飛びたてるようになるまで、池の水がもつのか。はらはらする毎日が続く。