隣りムラのライバル（とかってに僕が思っている）テンちゃんは、コロナ禍にも関わらず見る間に活躍の場を広げている。クラウドファンディングでゆるキャラの着ぐるみを作ってからは、得意のSNSと行動力で、あちこちに出没し、とうとう市の方も秋波を送りはじめたらしい。念願の公式キャラも目前かもしれない。
一方、ヒラトモ様のほうといえば、先日、少人数のツアーを決行したくらいで、絵本化の計画もとまったままだ。このままでは差が開く一方だ。どうするヒラトモ様。しかし、戦争中の手厚い待遇からの敗戦後の冷遇を経験しているヒラトモ様は、ライバルの好調くらいでめげることはないだろう。
ところで、市内の名刹である鎮国寺で、なんとテンちゃんプロデュースの御朱印帳が販売された。美しい和紙の表紙にテンちゃんが描かれている。さっそく購入したのだが、寺好きなのにもかかわらず、朱印帳を手に入れたのは初めてであることに気づいた。
中学生の頃、級友の間で寺社参りと朱印集めのプチブームが起こったときも、僕はそんなものは寺社参詣の邪道であると思って、密かに軽蔑していた。当然、その後の世間の御朱印ブームなどには、全く我関せずの態度だった。
ところが、諸般の事情によって、瀟洒で愛らしい朱印帳が手元にやってきた。一頁めに、テンちゃん特製スタンプによる鎮国寺の御朱印つきだ。
ふとこれから御朱印を集めるのも悪くないな、という考えが生涯初めて頭をよぎる。やみくもに集めるのではない。こだわりの禅宗様の名建築があるお寺だけの御朱印をコレクションするのだ。これなら、今までの自分のポリシーとも整合性がとれそうだ、とほくそ笑む。
