大井川通信

大井川あたりの事ども

トコトコとペコン

押しボタン式の信号機のある横断歩道で、小学校一年生くらいの女の子が、手をあげてトコトコと渡る。渡り切ると、両側の自動車(一台は僕の車)にむかって、それぞれペコンとお辞儀をした。

道を渡っているとき、女の子の頬に光るものが見えた気がしたので、歩道を歩く女の子を追い越すときに、そっとのぞくと、泣きはらした顔に涙が流れている。

どんな悲しいことがあったのだろう。

僕も泣き虫だったから、幼稚園に行くのを嫌がって泣きじゃくって、母親を困らせたそうだ。学校にあがっても、仕事をするようになっても、泣きたいような、くやしいような、逃げ出したいような、うんざりするような思いでいっぱいだった。

今の僕も、同じ気持ちで運転席にすわり、職場へとむかっている。人生もおそらくあと少し。君のように、トコトコと歩き、ペコンとお辞儀をして、またトコトコと前に進もう。泣きはらした顔を太陽にむけて。