眠ろうとしていたが、夜更かしをしたためか寝付かれない。部屋の蛍光灯はつけたままだ。僕はそのとき、もう夢の世界に入っていたのだろう。しかし、夢の中の僕は、まだ目覚めていて現実世界にいると思っている。その時。
視界がぼやけて、一面、細かい光の点滅が起きているような状態になった。その光の粒子のようなものは流動的で、形が変化し、化け物の眼や顔のようなものが隆起したりする。景色が不気味に、恐ろしく変化していくのだ。
僕は、これを目覚めたままみる幻覚だと自覚していた。夢の中ではなく、目覚めた状態で幻覚を見ているのだとすると・・・
僕は前日に目を通していた精神病理学者の古い本の内容を思い出した。目覚めつつみる幻覚は精神分裂病の兆候である。僕は、自分がおかしくなり始めていると思った。こんな体験は初めてなのだから。
これ自体が夢だと気づいたのは、翌朝本格的に目が覚めてからである。