大井川通信

大井川あたりの事ども

ハシビロガモの勤勉

冬を迎えて、近所のため池や川にいろいろなカモが姿を見せるようになると、今年こそカモ類も見分けられるようになりたいと、一時は考える。水辺で無防備に特徴のある姿をさらしている水鳥の種類がわからなくては、バードウォッチャーを名乗るのが恥ずかしいからだ。

しかし今に至るまで、興味が続いたためしがない。きっと、子どものお風呂のオモチャのアヒルみたいな、あのルックスが受けつけないのだ。野山の鳥たちのスマートなスタイルを見よ。

ところで、先日、近所の長浦池で、おかしな動きをしているカモを見つけた。少し潜っては水面に姿を現し、また潜る、という動きを飽きもせずに繰り返しているのだ。カイツブリみたいな達者な潜水ではない。体色は地味な灰色で一見してメスだが、くちばしがへらのように幅広く長い。

何日かあと、今度は池ノ谷池で、同じメスらしき一羽を見つけた。何らかの理由で群れから離れているのだろう。今度は首を伸ばし、くちばしを水面近くに少し沈めた姿勢で、旋回しながら泳いでいるのだ。波紋が小刻みに揺れているところを見ると、くちばしをパクパクと動かしているみたいだ。今度も同じ動作を飽きもせずに続けている。

図鑑で見ると、ハシビロガモだとすぐわかった。くちばしが広いという姿そのままの名前だ。たいていのカモ類は、ぼーっと浮かんでいたり、気まぐれに泳いだりしているみたいだが、ハシビロガモは勤勉で頑固一徹な職人みたいに、同じ仕草を繰り返す。

プランクトンという微小なものをエサとしているために、必要な栄養価を取るためには、休むことなく採餌しつづけないといけないのかもしれない。

こんな個性的なカモとの出会いをきっかけにしたら、今年こそは水鳥の世界に入門できるのではないかと期待してしまう。