大井川通信

大井川あたりの事ども

『「行政」を変える!』 村尾伸尚 2004

村尾伸尚(1955-)は、長く夜の某ニュース番組のキャスター(2006-2018)を務めていた官僚OBだ。彼がかつて大蔵省を辞めて三重県知事選に出馬した経緯や、役所勤めをしながら行っていた市民運動、そこでの行政を中心とした国の在り方の改革プランを、熱く語っている本。

今再読しても、臨場感があって面白い。ただし、当時から経過した15年もの時間を思うと感慨深いものがある。

著者の原点である岐阜県総務部長時代の予算改革の目玉は、三つ。通常の部局別に課題別の視点を入れた予算の策定。公的関与についての考え方の明確化。節減予算への2分の1メリットシステム。行政改革のゴールを住民満足度の向上におき、情報公開を武器に関係団体等とのしがらみを整理していく。このためのキーワードは、「情報公開」「分かりやすい説明」「サービスの選択」になる。

あの頃は、1990年代から続く「改革」の時代だった。冷戦終結に続くグローバル化バブル崩壊後の経済低迷があって、実際に大きな世界と社会の変動が実感できたし、明確な指針がない中でも、何かを変えなければいけないという共通了解があった時代だったと思う。

著者が、消費者の反乱、納税者の反乱、市民・NPOの台頭、改革派首長の登場などを背景として主張する行政改革や社会変革の方向は間違っていなかっただろう。しかし、15年たって、変化した部分もあれば、ほとんど停滞しているように見える部分もある。全体としてみれば、思ったようには動いていないのではないか。

当時の理念が実態から遊離してややうわすべりしていたところもあれば、当時勘案されていなかった要因がおおきくクローズアップされてきたところもあるだろう。それらを振り返るためにも、この本の議論は依然として重要だと思う。