大井川通信

大井川あたりの事ども

ぽけっとがいっぱい

 長男が幼児の頃、ポケットが大好きだった。本人のリクエストで、ズボンには、母親が追加のポケットをいくつも縫い付けていた。

ウルトラマンの変身アイテムや、ピストルみたいな武器を、ひとつひとつそこにいれるのだ。それで家の中では、自動車に見立てたテーブルに座って、おもちゃのハンドルを握りしめて、怪獣退治にでも出かけるつもりだったのだろう。

そんなことを僕はすっかり忘れていた。

一年前に長男が家に戻って、たまには家族で車にのって外出する機会もできた。そんなときの何気ない会話で、20年前の記憶を思い起こしたのだ。

記憶を生み出すのが日々の家族の暮らしならば、記憶を思い出すためにも、ともに暮らすことが必要なのだろう。