大井川通信

大井川あたりの事ども

100分の1

大学を卒業して、まず入社したのが生命保険会社だった。新入社員を集めて、4カ月間の研修が行われたが、そのメインは、1か月に渡る販売実習だった。二人でペアとなり、担当地区が決められ、ゼンリンの地図を片手に期間中に目標の件数の契約をとるというものだ。

見込み客には新入社員研修を前面に出して同情をかうようにしていたし、勧誘しやすい短期の貯蓄型の商品も扱っていたので、本当の飛込営業よりは有利だったと思う。

100軒訪問するとして、そのうちアンケートの記入に応じてくれるのは10軒。アンケートの内容に応じて再訪して保険の話ができるようになるのが、そのうち半分の5軒、そこから契約成立に至るのは1軒。たとえば、こんな割合だったように思う。

初めからその1軒が分かっているのなら何の苦労もないのだが、その1軒を探し出すためには100軒を回らないといけない。そもそもその100軒を訪問した体験とそこからのスキルがあるからこそ、当の1軒の心を動かして契約できたともいえるだろう。

僕が毎日ブログを書くのは、同じような法則を意識しているところがある。100本の記事の内、本当に人に読んでもらえる意味や価値のある文章は、おそらく一つくらいしかないだろう。それだけを実際に書いて公開できるなら効率的だ。

しかし素人の悲しさ。100本の記事を書き続けることで、ほとんど偶然のようにして、自分でも書いてよかったと思えるような記事が誕生する。

ただ単に数をこなせばいいというものではない。一つ一つの文章について、それぞれが100分の1の価値あるものを目指す気迫が必要だ。飛込営業での一軒一軒がそうだったように。