大井川通信

大井川あたりの事ども

飛松の球状黄鉄鉱

新しい地元の市史を図書館から借りて読んでいると、意外な情報に出会った。釣川の対岸の河東地区にかつての金山(河東鉱山)があることは地元の人から教えられて、何度か訪ねて坑口をのぞいたりした。今度の市史には金属鉱床の記事の中に、飛松の「球状黄鉄鉱」のことが出ている。古くからその産地として知られているそうだ。

飛松といえば、大井に隣接する旧田島村の小字名で、地元も地元だ。大井の里山の例の身体見立てでいえば、ヒラトモ様が祀られた左肩から背中側に下って、ちょうど左脇腹のあたりといっていい。紹介されている産地の近くにも行ったことがある。里山のふもとに開発が放置されたような区画があって、その先の崖のあたりだ。

大井川歩きと称して、自宅から歩いて行ける範囲の全ての事象に責任をもつことを標榜しているからには、これを見過ごすことはできない。15分ばかり歩いて現場に到着すると、崖のあちこちに掘り出したような跡はあるのだが、現在は「試料採取は困難を極める」とのことで、素人では手も足もでない。そこから里山の中に入って歩き回ったが、大井に抜ける道は見つからなかった。

ネットで調べると、ちょうどオークションで飛松産という球状黄鉄鉱が出品されている。直径2センチくらいの鈍い銀色の結晶体だ。運よく落札できたので、出品者の方に産地の地元の人間であることを伝えると、「標本が里帰りできて、送り出す側としてもなんだか嬉しい気がします」というメッセージをいただく。

取引上の事務連絡ですむところに、こんなに気持ちの細やかな言葉をかけてもらい、ほっこりした気分になる。届いたら、この標本をポケットにいれて産地の崖のあたりを散歩したいと思う。

 

ooigawa1212.hatenablog.com