大井川通信

大井川あたりの事ども

平井山に登る

平井山は、大規模なソーラーパネルの設置で、頂上部を崩されてしまった山だ。木々が切り払われて、造成があらかた終わった後で、調査後の古墳の石室の見学会で登ったことがあるだけだ。

その時は人の背丈よりもずっと高い石室の立派さに驚いて、これを壊してしまうのかと残念に思った。見学会のあとも長い間工事が滞っていたので、工事用の通路からでなく反対側の山道から登れないかと試みたが、ルートを発見することはできなかった。

今朝はふと思いついて、平井山のふもとのため池の脇の道に足を踏み入れてみた。以前は倒木や藪にさえぎられていた記憶があるが、今はまだ雑草はないし、こちらも里山を歩く経験をだいぶ積んでいる。

山道らしき痕跡を伝って、最後には樹々につかまって斜面をよじ登り、あっけなく頂上部分まで出てしまった。平らにされた山頂部には、一面ソーラーパネルが規則正しく並んでいる。その下には、貯水池や集落の建物が見下ろせて、これも不思議な光景だ。

雑木林では、イカルの群れを久しぶりに見る。遠目にも黄色いくちばしと顔半分だけが黒いという特徴が見て取れる。ウグイスのさえずりも今年初めて聞く。

斜面をよじ登っているとき、目の前の樹の幹に小さなセミの抜け殻がかじりついているのが目に入った。昨年の夏から、ずっと落ちないままだったのだ。家に持ち帰って専門の図鑑で見ると、ツクツクボウシの抜け殻だった。光沢がないのが特徴という解説のとおり、くすんだ色をしている。クマゼミよりも二回りくらい小さい。よくこんな身体であの大声を出すものだと感心する。