大井川通信

大井川あたりの事ども

『即効マネジメント』 海老原嗣生 2016

副題は「部下をコントロールする黄金原則」。ちくま新書の一冊だが、研修でのわかりやすいレジュメのようなマニュアル本になっている。

組織を活性化させて、要は儲けるようにするためには、メンバーのやる気(内発的動機)が必要だ。モチベーション向上のためのサイクルは、「機会ー支援ー評価ー承認=報償」ということになるが、日本の組織に欠けているのは、「機会を与え、支援をする」というサイクルの前半部分である。

そのためのやり方は、「2w2R」と「三つのギリギリ」とに集約できる。できるかできないかのギリギリ①のラインで、本人の「活かし場」(経験を活かせる部分)②を残しつつ「逃げ場」③をなくすようにして、「機会」を与える。

「支援」はまず、What(何を)とWay(どのように、というコツのてほどき)とで丁寧に教え、そのあとReason(理由)を教えて、自分で考えて仕事ができるようにする。

やる気のメンテナンスのためには、部下を良く見て、たえず目標のステップを刻みなおし、「横の見通し」(周囲への役立ち)と「縦の見通し」(キャリアへの役立ち)をつけるようにする。

大きなステージにたどり着いたときには、Range(範囲:フェアゾーン)を示して自遊空間をつくり、仕事をまかせる。これでモチベーションのサイクルをつなげて回すことができるという。

著者は、リクルート出身の人事の専門家で、長男が就職活動の時に、何冊か読んで役に立った記憶がある。この本でも、マネジメントのエッセンスを抽出して提示しており、実地ですぐに役立つように書かれている。

日本的経営(キャリア構造)の本質は、このモチベーションサイクルの活用ということにあって、その誕生が意外と新しく(1950年代終わりから1970年代の前半)、欧米の経営理論も取り入れた創意工夫の賜物だったという指摘は興味深い。やはり、この国の活力の源は「雑種性」であり「習合」なのだろう。