大井川通信

大井川あたりの事ども

用山ガイド

大井のひろちゃんの娘さん(アツコさん)と「ひさの」の好さんを連れて、大井の隣村用山(もちやま)近辺の案内をする。

まずは、釈迦院不動から。古墳の石室の一部をホコラ代わりにして、ごつごつした岩の不動様が、障害者施設の入り口の森にひっそりとまつられている。そこから、アオサギやらオオバンやらのいる貯水池の脇を歩いて、用山へ。

はじめに阿弥陀堂で大柄な木造の阿弥陀様にお参りする。平安時代の終わりから千年の間、村人によって守られ信仰されてきた仏像だ。素直に「南無阿弥陀仏」という言葉が口に出て、おのずから頭が下がる。

清流にそって集落を歩くと、前からご婦人が。声をかけると、偶然ひろちゃん家の知り合いだった。以前僕も聞き取りをした旦那さんも顔を出してきたが、ひろちゃんのことはすっかり忘れているようだった。アツコさんも好さんも地元でお年寄りにかかわる仕事をしているので、人がモノを忘れるのは当たり前だという受け止め方ができる。

この旦那さんがホコラの新築を手掛けた黒尊(くろすみ)様に今からお参りするつもりだというと、ニコニコと笑顔になる。

街道沿いの「黒尊様」の案内看板が、新しくなっている。村落共同体は閉鎖的なのにもかかわらず、集落の深部に祭られた守り神に関してはよそ者にもオープンなのが面白い。山道の参道は、最近整備されて格段にお参りしやすくなった。新しい自治会長が熱心だからと聞いたが、背景にはやはりコロナ禍があるような気がする。

ホコラの由緒書の前で、黒尊様を招いた「中国」とは外国ではなく、中国地方(山口県)のクルソン山だという自説を得意げに吹聴する。ホコラの裏からの見事な眺望に、三人で感嘆の声をあげた。

アツコさんは、大井の自宅を介護施設にしたときには、僕を用務員で雇ってくれるという。僕は、そこに大井研究所を併設して、用務員兼所長にしてほしいとお願いする。

用山ツアーは、参加の二人にとても喜んでもらえた。他者の眼を通して、あらためてこの土地の魅力を実感する。

 

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