大井川通信

大井川あたりの事ども

行きも帰りもホームで食べる

次男は、遠くの街に遊びに行っても、食べるのはいつも駅のホームのラーメンだという。どうしても友人関係や社会体験の広がりがないから、お金があっても同じことの繰り返しになりがちだ。家族で、美味しいお店など教えてあげても、がんこに自分の方針を変えない。困ったものだ、誰に似たものか、と思う。

実は僕も、基本的に安いものしか食べない。子どものときの生活習慣も大いに関係していると思うが、成人してからも、経済的にゆとりがある方ではなかったから、少しでも安いお店に入るようになり、結果的に同じ店ばかりになってしまう。

子育てが終わり、すこしは生活にもゆとりが出てきたとき、外食でも人並みに少しぜいたくなものを食べようと、夫婦でレストランのランチなどを食べ歩いてみた時期もあった。たしかに気分は変わるし、いくらかは美味しい。でも、そんな無理なふるまいは長続きしなくて、いつのまにかいつもの食生活に戻ってしまった。

一人で外食する時も、思い切って(といっても客観的にみれば、たいして高くはない)好物のバイキングなど店に入ってはみたものの、「ぜいたく」することへの罪悪感みたいなものがあって、落ち着かない。

こういうのを貧乏性というのだろうが、きっと死ぬまで治らないとあきらめている。

今日も、遠方の街に出かけたのだけれども、昼食は到着した駅のホームで、いつものかしわうどんを食べた。時間がないわけでなく、駅周辺の飲食店などいくらでもあるけれども、50円で鶏肉増しにするのが楽しみなのだ。

帰りの駅のホームで、電車の発車まであと10分ある。こんどは発作的にホームのラーメン屋で素ラーメンを注文してしまい、早い夕食をかき込むことになる。なるほど次男のいうように、値段の割には美味い。というわけで、行き帰りとも駅のホームで食事をすませることに。

コロナ禍で移動を禁止された黄金週間で、身近なぜいたくが許される連休だというのに、つくづく「貧乏神」に取りつかれた我が身を嘆いた。(本気じゃないけど)