大井川通信

大井川あたりの事ども

新型コロナウィルスに感染する ④(ホテルでの日々)

ホテルにつくと、マイクロバスから一人ずつ呼び出され、裏口の受付で防護服のようなものを着た担当者から書類と部屋の鍵を渡される。自分の部屋のあるフロアには、エレベーターホール付近に長机があり、水やスポーツドリンクなどが自由に取れるようになっている。毎食のお弁当も、館内放送の連絡後、ここで受け取るのだ。

次男と同室にしてもらったタブルの部屋は広々としている。角部屋で明るく、眺望は良くないものの、高速下の路地や渡辺通りの雑踏をのぞくこともできる。別のホテルの狭いシングルに押し込められている妻には、ちょっと申し訳ない。

朝晩二回、体温と酸素飽和度(95%以上が求められる)を測定して、決められた問診項目自己チェックして、内線電話による看護師さんからの聞き取りを受ける。あとは館内放送の指示でお弁当を取りにいくことだけが、必要なルーティンワークだ。

結局6日間ホテルにいたことになるが、後半目に見えてルーティンが崩れていった。毎日あるはずの館内放送がとばされる。看護師さんからの聞き取りの電話が、朝の一回だけになる。

小さいことのようだが、隔離された情報の少ない世界で、一方的なルールの変更は意外なストレスになる。まして急激に体調が悪くなる不安の中ではなおさらだ。

後から徹底してシステム化された病院に入院して気づいたことだが、必要に応じて急造された「宿泊療養施設」は組織として確立されたものでなく、それはやむを得ないことなのだ。無症状や軽症の患者の隔離が大きな目的だから、用意されるお弁当も高カロリーの一般向けのものだ。

僕は3日目になると、ほとんど箸をつけられなくなった。持ち込んだ栄養ドリンクとゼリーだけが頼りとなり、精神的にも追い込まれていく。