夜中症状の悪化に苦しんでいるとき、一度だけ、僕は自分の神々たちを思い浮かべたことがある。精神的に一番ダウンしているときだったのか、その中でエアポケットのように心に一瞬余裕が生まれたときだったのかは、今となってはわからない。
病院があるのは、広い意味で僕のフィールドだ。この土地からは、僕は力をもらうことができる。僕は里山の上の、ヒラトモ様のホコラを思い浮かべた。
それから、村の鎮守の和歌神社と、用山の疫病よけのクロスミ様。この地域で千年信仰されているアミダ様の姿を。
神々はそれぞれに親しげだったけれど、ヒラトモ様以外は、信仰とお世話をしている人たちがいる。しかし、ヒラトモ様の現役の氏子は、僕一人のはずだ。ヒラトモ様の本当の歴史を知るのも、おそらく僕だけだろう。
そんな僕がいなくなったら、ヒラトモ様、あなたも困るんじゃないですか、と病室のカーテンに映った神様の姿に僕は声をかける。
何もご利益があるなんて気持ちはなかったし、そんなことを期待する余裕もなかった。ただ何か安心できたのは間違いない。