大井川通信

大井川あたりの事ども

新型コロナウィルスに感染する ⑩(僕の悪夢/妻の悪夢)

治療がきつかった時期、意味不明の悪夢にうなされた記憶が残っているが、はっきり覚えているのは、一つだけだ。

舞台は職場の事務所だが、昔の学校の木造校舎みたいな古くさい作りだ。メンバーも微妙に違う。直接の部下にあたる人がいて、彼のモデルは明らかに昨年大病を患った真面目な同僚なのだが、様子が変だ。白塗りのピエロのように化粧していて、ニタニタ笑っている。

ある朝の会議で、僕は何の準備も説明もなく参加して、恥をかいてしまった。夢の中で僕はすっかり自分が正しいと思い込んでいて、部下たちを叱りつける。しかし、どこか暖簾に腕押しなのだ。

とくに白塗りの彼は、強く声かけすればするほど、ヘビのように身をくねらせて草はらに逃げ込んでしまう。そうこうするうちに、彼らが、コロナの対応でとても忙しく仕事していることが分かってくる。会議の準備にまで手が回らないのだ。

僕の体面なんて実に小さなことだったのだ。そんな自分に落胆したところで、夢が覚めた。

 

別のホテルで宿泊療養していた妻は、僕の入院の次の日に、やはり酸素飽和度の低下から救急車で病院に入院している。その後、一週間で退院しているので、僕よりは症状が軽度だったようだ。

その治療中にみたという「悪夢」。

夢の中で、眼球が真っ黒な男の子がでてきたそうだ。日本のホラー映画に出て来るあの不気味なイメージだ。妻はお迎えにきた死神だと思って、「おばちゃんはまだ死にたくないから、向こうに行きなさい」と言って、その子の眼球の周囲を白く塗ったそうだ。そうしたら普通に黒目と白目との可愛い子どもになって、どこかにいなくなってしまったという。

これは果たして「悪夢」なのだろうか。妻のキャラクターが濃厚に反映された夢だと、後から家族で笑うことができた。