大井川通信

大井川あたりの事ども

老前整理を始める

コロナ療養でホテルに入る前、最低限これは残したくないと思いついたモノの処分をした。ホテルで気にかかって、長男に書き残したメモの大半も、自分のモノの保存や処分に関することだった。生命の危機に遭遇すると、自分と所有物との間には、ごく一時的な関係しかないことを実感できる。

この経験のためか、退院した翌日から、猛然と自分の持ち物の整理を始めた。薬の副作用で目がさえて眠れないときも、身の回りの整理に時間をあてた。この記事を書いているのは、7月2日だから、実に15日間も毎日片づけ続けていることになる。それで、ようやく一段落したくらい。一日、二日の思い付きで、どうにかしようとしてきたのが間違いだったのだ。

モノを捨てるのは大変なエネルギーがいる。「生前」ではなく「老前」なのは、老いによってそれが困難になる前にやってしまおうということらしい。人生のこれからがある「老前」なら、本当に必要なモノとの対話を通じて、新しい暮らしにつなげることもできる。

整理はモノを減らすことであり、整頓はモノを使いやすいように配置することだという人がいて、なるほどと思った。モノを減らさずに分類や置き場所ばかりを変えていても、整理は成功しない。今回の僕の老前整理がうまくいっているのは、本腰を入れて捨てることに努めているからだろう。まずは捨て、残ったものを整頓する。

もう一点。あきっぽい僕は、一つのジャンルの整理で行き詰まると、全く別のジャンルの整理に手を出して気分転換を図るようにしたのもよかったようだ。手をつけていないジャンルなら、片づけの「限界効用」が高いから、すぐに成果が目に見えて、やる気の維持にもつながる。

僕の場合、やはりいつも本でつまずいてしまうのだが、今回は、写真や手紙、仕事の書類、おもちゃや小物等の整理と組み合わせて進めることで、持ち物全体の整理へと広げることができている。