大井川通信

大井川あたりの事ども

次男の子育て(介護の仕事)

次男が特別支援学校で就職活動を始めるときに、夫婦でどんな仕事がいいかよく話し合った。結婚してから、夫婦で一番真剣に言葉を交わしたテーマだったかもしれない。

次男は融通が利かずに、ちょっと不器用なところがある反面、集中力はある。だから、副担任の先生からは、彼はクリーニングの洗濯物を畳むような単純作業をすすめられた。妻は保護者対象の職場見学会に行って、一日中肥料の袋を重ねるような単純労働の実態にショックを受けていたから、それには反対した。

僕も反対だった。無言での単純作業の繰り返しでは、人間的に成長することも難しいし、転職に役立つようなキャリアアップもできないだろう。人目につかない職場環境ということも気になる。

それで、次男には介護職をすすめることで夫婦の意見は一致した。確かに3Kと言われるような厳しいイメージのある職場だが、仕事の中で人とのふれあいがあるし、仕事を通じてスキルアップできれば、需要は多いはずだから同様の仕事に転職することも可能だろう。利用者や訪問客の人目で守られているという側面もある。

しかし、就職はなかなか決まらず、正式決定は卒業式の翌日だった。最後に職場実習に行った施設の印象は初めはよくなかったようで、妻から間接的に、「ボクにはこんな仕事しかないんだろ」と次男が言っていると聞いて、悲しい気持ちになった。

あれから4年。大小のトラブルを乗り越えて、次男は今でも毎日、片道一時間半の時間をかけて同じ介護施設に通っている。最近、「ボクは介護の仕事が向いているかもしれない」とつぶやいていたと妻から聞いて、なんとも救われた気持ちになった。

年長者との会話が得意で、他人の気持ちがよくわかる次男の良さが発揮される場面もきっと出て来たのだろう。彼がこの先、長く幸せな一生を送るために必要な親のサポートはまだまだある。それを果たすために、この世界に無事戻れたことを、神に感謝。