大井川通信

大井川あたりの事ども

カイツブリの決意

僕が入院中、ババウラ池では、カイツブリのヒナが3羽無事に育ち、退院後の新生活に気をとられているうちに、3羽とも巣立っていったようだ。

天候と人間の都合で水位が下がったり、水が抜かれてしまうようなため池の不安定な環境だから、ヒナが卵からかえり、飛び立つことのできるまで育つのは決してあたり前のことではない。カイツブリは、おそらく飛ぶのが苦手で、親でもめったに飛ぶ姿を見ることができない。昨年の秋は、小さなヒナが、水を抜かれた池の底の水たまりで命を失っている。

ただ、子育てのためには、周囲を高い崖に囲まれて外敵から守られており、エサも豊富なため池は都合がよいのだろう。今朝見ると、梅雨時の豊富な水量をなみなみとため込んだババウラ池に、新しい親鳥の姿が見ることができた。

前回の子育てのあと水没して巣の残骸のあった場所に、新しい立派な浮巣が作られている。陸地から少し離れて、枯れ枝で囲われたその場所が巣作りには適しているのだ。もう卵も産んでいるのだろうか。親鳥は、浮巣に座って、池の水面をじっと見つめている。

これから、全力の子育てが始まる。もう後にはひけない。天候についても人の気まぐれについても、何の保証も成算があるわけでもないだろう。成否はともかく、自分は自分のやるべきことをする。

そんなカイツブリの静かな決意に、なんだか気圧される思いがした。