大井川通信

大井川あたりの事ども

早起きは三文の徳(カブトムシを拾う)

 

早朝、大井を歩く。

住宅街から、秀円寺の裏山に入り、石段を降りて境内へ。ここは、かつての里山の雰囲気がかろうじて残されたところだ。途中、石仏の六地蔵にお参りすると、すぐ裏の樹木から大きな鳥影が飛び立った。羽音がしない。フクロウだ。

秀円寺は曹洞宗の禅寺だ。小さいけれども、さっぱりと掃除が行き届いていて、道元の精神が伝わっているのだと思う。この寺では、道元について考え、道元と対話することができる。和歌神社なら柿本人麻呂だ。

大井川歩きの初心は、そういうことにあったんじゃないか、とちょっと反省。ぼんやりと歩くのではない、土地を踏みしめつつ、縦横無尽に想像力を発動する。

そんなことを考えつつ、鳥居をくぐり、和歌神社の境内に入ると、地べたに大きなカブトムシがひっくり返って足をバタバタさせている。どこにも傷はなく、元気なオスだ。

頭の上の短い角をつまんで、もって帰ることにした。全身が赤味がかっていて堂々たる体格である。秀円寺の裏山の入り口にある家では、庭仕事をしているご婦人が、「カブトムシですか」と声をかけてくれる。

昔の昆虫少年としては、気持ちが高まらざるをえない。小学生の頃、ついに近所の雑木林で見つけられなかったカブトムシ。半世紀の時間を隔てて、獲物を手に凱旋する。