大井川通信

大井川あたりの事ども

国東半島をドライブする

コロナ禍で家族が感染したとき、いろいろとお世話になった妻の彫金の先生のアトリエを訪ねるために、国東半島にでかける。妻は、20年くらい先生の教室に通っていて、長男が小学生の頃は、連れて行って一緒に自動車やドラえもんを作ったりしていた。

今回は、妻が療養所のホテルから電話して差し入れしてもらったり、家に残った長男を励ましてもらったりした。それで、今回のお礼の訪問に長男にも声をかけたら、珍しく同行するといったのだろう。

思わず、家族4人で泊りがけのドライブが実現した。長男も転職先の仕事が落ち着いて、転居先も決まったようだから、4人での旅行もおそらくこれが最後になる。親としては、成人した息子二人と旅行に出かけられること自体を幸せと思わないといけないだろう。

自分が子どものときには、親と過ごす時間はどうしようもなく長く感じた。しかし、親になってみると、幼い子どもたちは、突然現れてすぐに去っていく一時の訪問者のようだ。親と子がつかず離れずの、絵に描いたような家族の関係は、10年ばかりしか続かない。

しかも思春期、そして成人以降の子どもとの関係は、あやうい刃の上を渡っているようなもので、ていねいにメンテナンスしていかないと、どんなふうに転ぶかはわからない。

今回は、運転の大半を長男に任せる。運転がさほど好きでない僕には、これはとても嬉しかった。かつての家族ドライブの大変さを思い出して、長く生きているといいこともあると心底思えた。妻もしゃべり通しで、本当に楽しそうだ。

秋本先生のアトリエは、海から細い林道を奥に入ったところにあって、裏山には国東らしい磐座がまつられている。そこを散歩し、先生のアトリエで作品の話をするときも、応対の主役は、彫金にも興味がある長男だ。僕は一歩後ろにいて、ここでも楽をさせてもらった。