大井川通信

大井川あたりの事ども

『英語の構文150』 高梨健吉 1969

高校時代の英語の参考書といえば、美誠社の構文シリーズが懐かしい。授業の副読本に指定されたのは、1978年の改訂新版だったかもしれない。この本は、その後、新訂版、改訂版と引き継がれ、1999年まで30年に渡って発行されている。

2000年以降は、New Editonとなって著者も変わり、判型も大きくなって昔の面影はなくなったが、「主語の研究」、「時間構文の研究」といった学術書風の章立てと、例文、研究問題、練習問題という各節の構成は以前のままだ。(2011年以降のUPGRADEⅮ版では、これらの特徴が失われて普通の参考書になってしまった)

日本人に目につきやすい英文のパターンを「構文」として寄せ集めて覚えさせるというのは、古くからある学習法で、それへの批判をどこかで読んだことがある。山崎貞の『新々英文解釈研究』などは戦前からあるもので、僕の学生時代にはまだ改訂版がまだ書店に並んでいた。『英語の構文150』は副読本だったけれども、授業で実際に使ったものも、もっと薄い構文の演習テキストだった。

高校三年になって、僕が受験勉強用に購入したのは、同じく美誠社の高梨健吉著『英語構文の研究』だった。『英語の構文150』よりも、練習問題のレベルが高く、ボリュームもあったと思う。僕の英語力の基礎になったのはこの本で、予備校などに頼らずに現役で志望校に合格できたのもこの本のおかげだけれど、こちらはとっくの昔に絶版になっている。

自分にとって区切りの年に、英語力をステップアップさせたいと思って、手元にあるNew Edition版を読み始めてみた。構文のおさらいになるし、何より研究問題や練習問題の文章が面白い。小説や評論の原典から数行だけ抜いてきたような文章の本物感と、その意外性と突拍子のなさがツボにはまる。

今の時代には、もっと効果的で無駄のない学習法があるだろうが、この年齢になって効率性を求めてもしようがない。昔を振り返りつつ楽しめれば、それでいいのだ。