大井川通信

大井川あたりの事ども

カイエビとホウネンエビ

コガタノゲンゴロウと運命的な出会いをした田んぼには、よく見るとたくさんのゲンゴロウの幼虫が泳いでいる。一センチあまりの色の薄いムカデみたいな形状で、頭部にはしっかりした大あごがあって肉食だ。

ただし、成虫の数ではヒメガムシの方が多いから、もしかしたらよく似たガムシの幼虫が交じっているかもしれないが、僕には区別がつかない。

幼虫たちは、浅瀬に乗り上げたり、水草の茎に寄り掛かったりして、身体をそるようにして水面から頭部を持ち上げる。よく見ると、獲物をアゴにくわえてむしゃむしゃかじっているようだ。図鑑の記述によると、これは獲物を横取りされないための工夫らしい。

よく見ると、どの幼虫の獲物も同じものであることに気づく。5ミリ程度の楕円形の二枚貝みたいな生き物で、殻はとても薄く半透明だ。幼虫は、中身だけを食べるときもあれば、殻の部分もバリバリと砕いて食べてしまうときもある。幼虫のアゴから上手く逃れたときには、器用に水中を泳いで逃げる。その泳ぎは貝とは思えない。

実は以前から、田んぼの中で泳ぐ小さな楕円形の生き物が気になっていたのだ。帰ってから調べると、カイエビの仲間だとわかった。なるほど、カイエビとはよく名付けたものだ。

田んぼにいる小さなエビでは、カブトエビホウネンエビが有名だが、カイエビも同時期に出現しているそうだ。大井の田んぼでは、まだカブトエビを見たことがない。昔は観賞用に飼ったというホウネンエビの愛らしい姿は、この水田でも少ないながら見つけることができた。