大井川通信

大井川あたりの事ども

タガメには勝てない

月例の吉田さんとの勉強会。今月の奇跡の大型ゲンゴロウとの出会いを受けて、今回は実物資料に基づいた報告をしようと、茶目っ気を出す。

まずは、自分で拾ったアオイガイの殻と、先日ネット販売で手に入れたタコブネの殻。それに両者のガチャガチャの海洋生物シリーズでの縮小模型。それから、今朝田んぼで最採集したばかりの「カイエビ」のビン入りの実物。つまりは、貝じゃないけど貝みたいな殻で身を守る生き物のコレクションというわけだ。

もう一つは、本命のゲンゴロウ。大きめのビンに、ハイイロゲンゴロウ一匹とコガムシ一匹を移し替えて、持参する。説明のポイントは、両者の呼吸法の違いだ。水中に落ちた甲虫が長い年月をかけて、どんな工夫をして水中生活に適応してきたかということ。

ゲンゴロウは前羽と腹の隙間をボンベ代わりにした上に、おしりにつけたあぶくで、水中の酸素を取り込んでいる。一方ガムシは、平たいお腹に空気をため込むから、水中でお腹が銀色に光って実にきれいだ。

しかし、実際には日中のファミレスで虫入りのビンをテーブルの上で目立たせるのははばかられるから、こそこそやらざるを得ない。すでにカイエビが死んでいるというアクシデントもあった。フリートークでやったので、せっかく作ったレジュメを渡しそこね、今一つ説明も伝わりずらいというミスも。

僕の説明が終わると、吉田さんはおもむろに語り出す。吉田さんの実家は、別府湾に面した浜脇温泉で、すぐ裏はニホンザルで有名な高崎山がある。子どもの頃は、山の中に入って、カブトやクワガタを見つけたが、山中の川で、タガメがとれるスポットがあったそうだ。ゲンゴロウもいたそうだが、やはりそれには目もくれずに子どもたちはタガメを採っていたらしい。

タガメは水中昆虫の王者ですものね。獰猛でヘビを襲ったりするようです。水中での呼吸法はゲンゴロウやガムシと違い、シュノーケルみたいな尻の呼吸管を発達させていますよ。などと僕は出来合いの知識で応戦する。

吉田さんによると、タガメはよく水面近くで裏返っていたそうだ。水をのぞき込んだ猫が顔を食いつかれた事件もあったと、さすがに本物を知る人ならではのエピソードを披露してくれる。子どもの頃の吉田さんにとっては、小さなゲンゴロウなど何ほどでもなかっただろう。

僕は、何気なくゲンゴロウの入ったビンを袋の中に戻してレポートを切り上げ、次の話題に移った。