大井川通信

大井川あたりの事ども

カラスのお葬式

以前は農村や峠の道で自動車にひかれた動物は、圧倒的にタヌキとイタチが多かった気がする。近ごろは、コロナ禍に自然の歯車も狂わされているのか、今までみたこともない生き物の轢死体を見かけるようになった。

いくらか前になるが、大きなイノシシが、歩道に血だらけになって倒れていた。初めは、なんでこんなところでイノシシが死んでいるのか見当もつかなかった。猟銃で撃たれた後、ここで力尽きたというのも不自然だ。しばらくしてから、自動車にぶつかって死んだというのが一番自然だと気づいた。街道には大型のトラックも走っている。

すると今度は、イノシシの子ども(ウリボウ)が車道に横たわっていた。シマシマ模様の小さな身体が可愛くて、つらい。

昨日は、首をすっと伸ばしたシカが道路わきに倒れていた。まだ子鹿だろう。「生きる時間が黄金のように光る」(村野四郎)いとまもなく、対向車のライトに目がくらんでひかれてしまったのだろうか。

イノシシもシカも、こんな形で見るのは初めてだ。

そういえば先日、見慣れない真っ黒い物体が対抗車線に落ちていた。通り過ぎる際に確認すると、カラスの死体だ。エサでもつつくのに夢中でひかれてしまったのだろうか。カラスの交通事故死を見るのも初めてのような気がする。そのとき、道路上の電線にたくさんのカラスが集まっているのに気づいた。

タヌキの死体などを数羽のカラスがつついているのを見たことはあるが、こんなふうに集まったりはしない。仲間の死体をエサとしてねらっているわけではないだろう。知能の高い生き物がおこなう仲間の追悼の儀式めいたものにちがいない。

カラスの寿命は20年くらいあるとどこかで読んだ記憶がある。近しい群れの一員として日々行動を共にした仲間の命が不意に断たれる。何するでもなく集まって呆然としているのは、生き物として不思議ではない気がする。