大井川通信

大井川あたりの事ども

きついなかでやさしくあること

介護職員初任者研修が始まる。これから一カ月半、土日が終日つぶれるのは、正直たいへんだ。しかし、介護の仕事をやるうえでの基礎的な資格だから受けないといけないし、経験のないものとしていろいろ学んでおきたい。

ただし、実際には、それほど期待はしていなかった。小規模の民間事業所が併設しているスクールで、この業界はブラックで儲け主義のイメージもあるから、多角経営の一環としてやっているだけの、おざなりな講座になるのではないか、という悪い予想もあった。講習料がかなり安いのも、安かろう悪かろうということになりかねない。

ところが、初日の印象はかなり良いものだった。初日の講師は、経営母体の事業所のスクールの責任者とおぼしき職員で、彼の印象と話の内容がとてもよかったのだ。丸一日その人の話をきいていれば、人間性や事業所の考え方までが、はっきりと伝わってくる。これなら、今後の外部講師による講義も期待がもてそうだ。

講師は、43歳で、大学をでて20年間、この業界で様々な立場で働いてきた人だった。業界の現状や、問題点、多変さややりがいなどが、講義の合間に、やさしい言葉でしっかりと伝わってくる。極度の高所恐怖症で、3階以上の利用者のお宅を訪問するときは、外を見なくていいように手のひらで視界をふさいだなどというユーモラスなエピソードも交える。

大学では全く違う分野を学んだけれども、自分が普通の企業で働いているイメージがわかなくて、介護職を志望したそうだ。厳しい仕事だとはわかっていたが、きついなかでやさしくなれたら、本当のやさしさが身に着くのではないかと。しかし、実際には、やはりそれは難しかったと講師はいう。利用者一人一人の状況は全く違う。それに新鮮に向き合ってケアするのがやりがいになるとも。

僕も職場がとても忙しく厳しかったとき、周囲の人たちを見て、そういうときにその人の「地金」がでるなと実感したことがある。これからまた自分の地金が試される時がくるのは怖いような気もするが、覚悟を決めよう。