大井川通信

大井川あたりの事ども

介護初任者研修二日目

今日の講師は、前日のように初めから感じのいい人ではなかった。黒塗りの高級車をスクールに乗りつけて、ちょっといかつい感じだったのだ。デイサービスの経営者ということだったが、話しぶりも含めて、むしろ僕が事前に想定していたような講師像に近かった。すでに施設に勤務している参加者に、しきりに独立を勧めたりする。

ただ、施設でのリスク管理や利用者とのコミュニケーションの話をするなかで、具体的な経験談を交えるようになると、少しずつ介護の仕事への思いが伝わってきた。

最後にこんなエピソードを話してくれた。この仕事を始めた頃の現地研修での体験談だ。その施設の人から指示を受けて、彼が一人のおばあさんの隣に座ったとき、そのおばあさんが開口一番「どうせ、あの人は黙ってうなづいて話を聞いておけば暴れたりしないから、と言われてるんでしょ」と言われたそうだ。図星だった。彼女が自分が施設でどう見られているかを知りながら、気づかぬふりをしているのが不憫だった。

だから、そういう思いを強いられる利用者を一人も出さないようにと思って頑張って仕事をしてきたという。おそらく照れもあるのか、ぼそぼそと早口でしゃべって少しわかりにくかったけれど、その思いは伝わってきた。

僕は今の仕事の経験から、人がやる気になったり、頑張ったりする場合にモデルになる存在がいかに大切であるかに気づかされた。いざ自分がまったくの初任者として異分野に挑戦しようと思ったとき、励みになるのは魅力的な先達の姿だとあらためて実感している。